往古駿河国庵原郡内房村に胎蔵寺という真言宗の古刹があった。宗祖在世当時には東林法印（兄）、仏像法印（弟）が住持であったが、後の内房尼御前の子である。長子は、内房殿と称されたが、岩本の郡代官をしていて実相寺の住僧厳誉律師とは俗縁の故を以って往還していた。然るところ、宗祖が閲蔵のため偶々来寺されたのに寺主を始め四十九院の僧たちは嫌って入蔵させようとしない。内房殿は宗祖に見えて畏敬の念を懐き供奉して邸に帰り、母子ともに信伏随従するに至った。茲に兄弟の法印は宗祖と法論を交したが、終に説き伏せられて改宗の余儀なきに及んだ。時に遠藤左金吾の一族が来寺し、一夏九旬の間、当所に留まる内に一村悉く宗祖に帰依したという。即ち東林房は日報、仏像房は日浄と名を賜り現山寺号に改称し、宗祖を開基と仰いで本化の道場となった。当寺は、宗門としては他宗より改転した最初の道場として記憶されてよい寺である。通師（堀の内）法縁。
寺宝
日妙御書・一の谷御書二行断片・要文断片（宗宝）・日常遺骨・文晃金屏風・身延山関係文書・お万の方御消息・日遠御消息・武田家関係古文書・徳川家歴代の御朱印。日臨・日朝本尊。身延歴代の曼荼羅数十幅（准宗宝）。

ＪＲ身延線芝川駅下車徒歩２５分、タクシ－で５分。